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写真:武富将洋

世界最高峰の銘醸地・ボルドーの中でも、高級な赤ワインを多く産出するメドック地区。
そのつくり手たちが、上顧客やゲストをもてなすために専属シェフにつくらせる、知られざるガストロノミーがある――。

 フランス、引いては世界随一の銘醸地・ボルドー。その中でも「グラン・ヴァン」と呼ばれる最高級のワインを産み出す「格付けシャトー」がひしめくボルドーワインの聖地・メドック地区。ワインファンなら一度は訪れたい巡礼地だろう。そして、足を運ぶからには、その土地で採れた素材を使った料理とのマリアージュも味わってみたいもの。
 しかしながら農業地帯であるメドックには大都市のようにレストランがひしめいているわけではない。ボルドー全体を見てもミシュラン星を有するレストランはごく限られているのだ。
 その背景には、家庭料理が発達しているためにレストランより家庭で食べる習慣が根強いことと、シャトーが専属のシェフを雇い一級の料理でゲストをもてなすという文化があるためとも言われている。
 今回、メドック地区を訪ね、特別にいくつかのシャトーでもてなし料理に与ることができた。

シャトーでつくられたワインを、
そのワインの味わいを知るシェフが
その土地の旬の素材を用いて料理するという
約束されたマリアージュ。

 シャトーでは、醸造所や樽貯蔵庫を見学した後、ゲストルーム、またはテイスティングルームとして使われることの多いシャトー本棟に案内される。
 そこには、シャトーの長い歴史を示す展示とともに、豪華な調度品がしつらえられ、時には由緒ある芸術品のコレクションが並び、そこに現代も息づく貴族文化の名残を見ることができる。
 テイスティングルームでワインを試飲した後に、ダイニングルームへ。食前酒を愉しみながら、シャトーの歴史、現代におけるメドックやボルドー全域のワイン事情などに話を咲かせていると、どこからともなく、“グルマン” ――お腹が空くような香りが漂ってくる。

 シャトー・フェラン・セギュールは、シャトー・モンローズ、シャトー・カロン・セギュールに隣接する上質な土壌に恵まれた、AOCサン・テステフのシャトー。シャンパーニュ地方の名門「レ・クレイエール」や、パリの2つ星「タイユバン」など一流レストランを擁するガルディニエ家のグループに属し、ガストロノミーとの相性を考えられたワインづくりを行っている。


 シャトー・フェラン・セギュールのワインの特徴である、ヒマラヤ杉のようなアロマ、後からやってくるふくよかなブーケと奥行きのある味わい。そのしっかりとした酒躯、エレガントさが同居するワインの複雑さと、セップ茸のリゾットや鴨肉のココットなど、“大地”を感じさせる滋味を引き出した料理とが見事に融合する。

 シャトー・ラグランジュは、1973年にサントリーが経営参入し、見事に再生しグラン・クリュ第3級の名声を取り戻したAOCサン・ジュリアンに属するシャトー。巨大な資本注入により、近代設備を整えた醸造所とともに生まれ変わった本棟は、宮殿さながらの佇まい。芸術活動でも知られるサントリーグループに属するだけに、貴重な美術品や有名画家の作品が博物館さながらに飾られていたり、広々としたホールではクラシック演奏やミニコンサートが催されるなど文化交流をベースとした本格的な社交の場としても機能している。


 シャトー・ラグランジュ」は、きらめくような明るいルビー色をし、陽気なベリーの芳香にふくよかかつ風格を感じさせる女性的な味わいを持つワイン。そのまろやかな味わいを引き立てるような、家庭的で温かい料理。野菜をふんだんに使用した前菜のポタージュから、主菜の子羊の骨付肉、またデセールまで、それぞれの持つ柔らかみ、酸味と融合し、コースを通して味わうことができる。

 シャトー・ラトゥール・カルネは、ポイヤックとサン・ジュリアンの境目のサン・ローラン村に位置するAOCオー・メドック、グラン・クリュ第4級のシャトーで、成立は12世紀に遡る老舗。かつては哲学者・モンテーニュの一族や文化にゆかりの深い人々が通ったという由緒ある歴史を持つ。現在は、シャトー・パプ・クレマンのオーナーでもあるベルナール・マグレ氏がオーナーを務め、そのシャトーの歴史を継承し現代の文化人・知識人の間に交流が広いことでも知られる。「空飛ぶ醸造家」ことボルドー右岸の人気醸造家ミシェル・ロラン氏がコンサルティングを務め、近年とみに質の向上が評価されている。


 若々しいアロマと強いアタック、それと同時に奥行きを感じさせる「シャトー・ラトゥール・カルネ」。その力強い酸味とバランスの取れた青い果実味は、海鮮料理に使われるヴィネガーの酸味、ニンニクで味付けされたソースを添えたビーフなどともよく合う。シャトー・ラトゥール・カルネのノーブルなイメージを象徴するようなヌーベル・キュイジーヌ風の料理が、シャトーのインテリアともマッチングし視覚的にも満足させてくれる。

 このように、特別にしつらえられた空間でもてなされていると、宮廷料理人がつくる一流の料理でゲストをもてなすという、フランスが脈々と受け継いでいる1つの成熟した文化の様式美を感じることができるだろう。
 現在メドック地区はじめボルドーでは、以前よりさらに「来て、味わってほしい」と、間口を広めゲストを歓迎する空気が高まっている。
 第2級の中でも高名なシャトー「シャトー・ランシュ・バージュ」の一族カーズ家が運営する、ハイクラスなワインテーマパーク「バージュ村」や、ワイン博物館「ラ・ヴィナリー」など一般客を対象としたツーリズムも発展しつつある。
 シャトーの中には宿泊設備を備えホテルとして利用できる所もあり、そこでシャトー自慢の料理とワインとのマリアージュを味わうことができるだろう。

メドックワイン委員会
Conseil des Vins du Médoc

TEL :+33 5 56 48 18 62
FAX :+33 5 56 79 11 05
1, cours du XXX juillet - 33000 Bordeaux
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